先日オークランドからダニーデンに飛んだとき、飛行機の窓からある意味ニュージーランドらしい面白い光景が見えた。
それは、一面これでもかと黄色い絨毯に覆われた山々。それはもう見事と言ってもいいくらいに山の斜面が黄色い花で覆われていたのだ。
NZに住んでいるとあまりに見慣れた光景になってしまって記事にしてこなかったけれど、この黄色い花はきっと気になっている方も多いのではないだろうか。今日は「ニュージーランドの野山を覆う黄色い花はなに?」と題して記事にしてみよう。
ニュージーランドでよく見られる黄色い花は「Gorse(ゴース)=ハリエニシダ」
僕のように飛行機の窓辺から、あるいは郊外の牧草地をトレッキングしていて、トゲトゲの葉をもった、黄色い花がびっしり生えたヒトの背丈くらいの植物に出くわしたことはないだろうか。
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これは「Gorse(ゴースと読む)」と言って、和名ではハリエニシダと呼ばれるマメ科の植物だ。
残念ながらニュージーランドの在来種ではなくて、ヨーロッパから人間が連れてきた外来種。1830年ごろにNZにやってきた最初期の入植者たちが、牧場や敷地の垣根をつくるために植えたのが始まりとされている。
実際、触ってみるとトゲトゲがすごくて枝は密で固く、ちょっとやそっとじゃ壊れない天然の生垣なのがよく分かる。生育もカンタン、風も通さないハリエニシダは、羊の放牧から国が始まったNZにとってはなくてはならない植物だったのだろう。
ハリエニシダ、それは世界最悪クラスの雑草。根絶は不可能!
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とはいえ、それも今や過去の話。
試しにニュージーランド人にハリエニシダの話を振ってみよう。きっと多くのキーウィは顔をしかめて、「確かにキレイだけど、あれは最悪のweed(雑草)だからねぇ・・」と言葉を濁すに違いない。
自然保護活動が盛んに行われているこの国において、ハリエニシダほどの”邪魔者”はそうそういない。いったん繁茂してしまうとそのトゲトゲのおかげで容易には取り除けないし、黄色い花に覆われた山々は餌がないからNZ原産の生き物は暮らしていくことができない。繁殖力もきわめて高い。1㎡あたり最大で35,000個(!!!)もの種を作り、しかもその種は30~50年も土の中で発芽の時を待つことができるという。例えブルドーザーで押し倒したとしても、それは次なるハリエニシダの成長を促進することに他ならないのだ・・。
今現在、ニュージーランドの原生林を除いた国土のうち、実に5%がこの花に覆われ、不毛の大地と化しているとも言われている。なるほど、「世界の侵略的外来種ワースト100」に名を連ねるのも納得のやっかいさだろう。
とはいえ、有用な面も多々あるハリエニシダ。使いかたを知ってうまく利用するべし。
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それほどまでにやっかいなハリエニシダは、もう根絶することはできないのだろうか?
ニュージーランドでは国を挙げてこの植物の撤去を進めているが、草の根レベルでは近年では不毛な戦いをやめて、うまく利用する方向に進んでいるように思える。
例えば僕が以前参加したオークランドの沖合の島「Motutapu Island モツタプ島」の植林活動では、ハリエニシダはあえてすべて切り倒さず、適度に間引いて、その空いた空間にNZ原産の植物の苗を植えていた。こうすることで荒れ地でも強風から苗を守れるし、数十年経って苗が大きくなれば自然にハリエニシダは木の陰になって枯れていく、というわけだ。
冬から春にかけて満開となる花はミツバチにとっては嬉しい冬の花でもある。何より、マメ科の植物だから窒素を地中に固定できて土地を肥やすことにもなる。こう挙げてみると、悪いことばかりでもなさそうだ。
以前には、現地のテレビ番組でハリエニシダでワインをつくった、なんて人が登場していたこともある笑。これはあんまり流行らないかもしれないけれど・・(苦笑)、きっとNZはその根っからのイノベーション力で、これからもハリエニシダをうまく使っていくように思う。
◆参考
wikipedia – Gorse in New Zealand
wikipedia – 世界の侵略的外来種100
Last Updated on 2022年12月7日 by 外山みのる
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